東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)66号 判決
一、原告の主張一について
成立に争いのない甲第一号証(本願特許公報)によると、次の事実が認められる。
本願発明におけるネジ歯車型旋転装置とは、両端に入口穴および出口穴を有するケーシング中の平行な互に交わる孔内に、回転自在に設けられたネジ歯車型の第一および第二ロータの陸と溝とが互に噛合い、相互にかつケーシングと協働して内部に流体作動室を形成し、両ロータの回転につれて出口穴または入口穴に連通するこれら流体作動室の容積が変化することにより、流体を加圧送出する圧縮機として、または流体により駆動される原動機として動作する装置である。
ところでその動作上両ロータの陸と溝との歯形は、ロータの円滑な回転を可能にするよう噛合わねばならないことは当然であるが、それに加えて両ロータの噛合個所において流体作動室の気密性が保たれるように密封線を形成することが重要である。したがつてネジ歯車型旋転装置においてネジ歯車の噛合を考慮しなければならないことはいうまでもない。そこで、成立に争いのない甲第六号証(第二引用例)、同第七号証の一・二・三(第三引用例)によれば、第二、第三引用例は円形歯形の噛合いに関する一般理論であつて動力伝達用歯車に限定されるものではなく、本願発明の装置におけるネジ歯車の噛合にも適用できるものと認められる。したがつて、第二、第三引用例は本願発明と技術分野を異にするということはいえず、これらを審決が引用したからといつて違法のかどはない。
二、原告の主張二について
成立に争いのない甲第五号証(第一引用例)によると、審決引用図面はネジ歯車型旋転装置を示しているが、動力設備のシステムの一部として図示されたものであつて、その第一ロータの凸彎曲の陸の断面は円形に見える輪廊を有することがうかがえるけれども、円形であるかどうかは必ずしも明かでない。しかもネジ歯車型旋転装置としては勿論二つのロータ間にいかに密封線が形成されるかについて発明の詳細な説明ないし図面に何ら開示するところがない。ところで、甲第六号証、同第七号証の一・二・三によれば第二、第三引用例は平面的な歯形の理論・解析であつて、円形歯形をネジ歯車型旋転装置のネジ歯車に適用するときに重要な要素となる立体的なロータ間の密封線の形成が如何になるかについては何ら開示するところがない。
そうすると、密封線の形成を重要な要素とするネジ歯車型旋転装置において、第一ロータの凸彎曲の陸の断面を円形または実質的に円形にする等本願発明独自の構成と原告が主張する点は各引用例に何ら示唆するところがなく、したがつて、これらから容易に推考できるとした審決の判断は誤つているといわなければならない。
三、原告の主張三について
本願発明において円形の歯として密封線に中断部分が生ずる不利益はまぬがれないが、その不利益をこえて、密封線が短縮されること、および閉じこめられるポケツトの生成が回避されることという作用を有し、これにより効率の増大という効果が得られることについては、当事者間に争いがない。このような効果は、本願発明の密封線の形成が前項説示のように各引用例から予測できないことから、第一ないし第三引用例からとうてい予想し得ないものであつて、作用効果は顕著なものといわねばならない。したがつて、この点を看過して本願発明の進歩性を否定した審決はその判断を誤つているといわねばならない。
四、結論
そうすると、審決には前記の違法があるから取消されねばならない。よつて、原告の請求を認容する。